東京証券取引所は定期的に上場会社の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を集計・分析した「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書」を作成しています。
2023年4月4日に「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2023」が発行されたため、今回以降はしばらく同資料を参照して昨今の社外取締役事情の変化を取り上げていきます。
今回は取締役の任期の変化を取り上げます。
会社法第332条第1項では、取締役の任期を「原則として選任後2年以内」と定めているため定款や株主総会での決議で短縮することが可能です。
そのため昨今ではビジネス環境変化への対応や、毎年信任の確認を行うことによるコーポレート・ガバナンス体制の強化等を目的として取締役の任期を1年とする会社の割合が増加しています。
しかし、機動的な人材配置、短期間での信任確認によるコーポレートガバナンスの強化がメリットだとしても、以下のようなデメリットも考えられます。
短期的な視点の強化:任期が短いと、社外取締役は企業の長期的な成長戦略や持続可能性に焦点を当てにくくなる可能性があります。短期的な利益や業績に重点を置く傾向が強まり、企業価値の向上が阻害されることがあります。
監督機能の低下:任期が短いと、社外取締役が経営陣や従業員との信頼関係を築くのに十分な時間が与えられない場合があります。その結果、彼らが経営陣に対する適切な監督機能を果たすことが難しくなることがあります。
ステークホルダーとの関係:任期が短い社外取締役は、企業のステークホルダーとの関係構築や信頼の獲得が難しくなることがあります。これは企業のイメージや評価に影響を与える可能性があります。
今後コーポレートガバナンス強化を目的とした社外取締役の採用を進めるにあたっては、独立性が高くなおかつ長期的に価値を発揮できるような社外取締役の採用が重要になってくると考えられます。