東京証券取引所は定期的に上場会社の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を集計・分析した「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書」を作成しています。
2023年4月4日に「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2023」が発行されたため、社外取締役事情の変化を取り上げていきます。
今回は独立社外役員比率の変化を取り上げます。
2021年6月に改訂が行われたコーポレートガバナンス・コードでは、上場規則上求めている水準からさらに一歩踏み込み、独立社外取締役の選任について以下のような基準を定めています。
【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。
また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。
端的に言えば2022年4月から始まった新市場区分において
・プライム市場に属する企業では資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきである
・その他の市場の上場会社においては2名以上選任すべきである
といった条件を半ば義務化したことになります。
その状況下でのここ数年の取締役会の中での独立社外取締役の比率を追って行きたいと思います。
以下が独立社外取締役を3分の1以上選任する上場会社の推移になります。
内容を見てみると順調に独立社外取締役比率が増加しており、かつ前回の記事を鑑みるに市場全体では社外取締役は健全な増加を見せていると推察されます。
今後懸念となりそうな点は、独立社外取締役としての資格を持った人材のの増加自体に問題はなくとも、スキルの面で取締役としてガバナンス機能を果たせる人材の割合が増えているかという点でしょう。
この点に関しては当資料のみならず、今後も追いかけていくべきポイントだと考えます。
今後マーケットがさらにコーポレートガバナンス強化を標榜するのであれば、より一層社外取締役未経験の人材の登用が必要になってくると考えられるでしょう。