経済産業省に設置されている審議会(CGS研究会)からのデータ
2022年4月6日に開催された第4回 CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)第3期では主に監督側の機能強化に関する各論について議論されました。
その中で、参考情報として提示されていた「社外取締役が過半かどうかで見た時価総額の推移」のグラフが取締役会内の社外取締役比率に対して示唆のある内容でしたので、ここで特別に取り上げて見てみたいと思います。
(注)2022年1月31日時点におけるTOPIX500構成企業のうち、基準日である2012年1月1日時点において上場していた企業(467社)を対象に、各社における2012年1月1日時点の
時価総額をそれぞれ100として相対化し、その相対化した数値の合計を用いて算出(ウェイト付けしていない)。社外取締役の比率は直近(2022年3月24日時点)のものを使用。
(出所)Bloomberg、EoLを基にして経済産業省が作成。
研究会がグラフから読み取っていること
以下、研究会の資料からの抜粋
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社外取締役の比率で見ると、直近で社外取締役が取締役会の過半である企業は、そうでない企
業に比して時価総額の伸びが大きい。社外取締役が独立した立場から経営を監督することについ
ての市場からの期待・評価は高く、過半数を独立社外取締役とすることが必要かどうか検討する
企業にとって、重要な視点ではないか。
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もう一歩踏み込んだ省察
掲げたグラフの縦軸は「2022年1月31日時点における時価総額を100とした時の相対数値」、横軸は時間経過、それぞれの線は社外取締役が取締役会の過半である企業と社外取締役が取締役会の半数以下の企業である。
明らかに時価総額には有意な差が出ているが、これが果たして「社外取締役が取締役会の過半であるか否か」が直接の因果関係を与えているかに関しては判断に留意したいところである。
例えば「取締役会が社外からのアイデアを重用する企業」であると、「社外取締役が取締役会の過半である」かつ、「時価総額の増加率も高い」ともなりうる。
また、研究会のコメントでは「社外取締役が独立した立場から経営を監督することについての市場からの期待・評価は高く」とコメントされているが、このデータには社外取締役が独立取締役の要件を満たしているとの条件付けがされていないため、関係会社からの社外取締役の受け入れによって業績を伸ばしている企業が含まれている可能性もある。
改めて社外取締役の独立性については注意して観測していきたい。